ストレスチェックの目的と実施方法|未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント

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ストレスチェックの目的と実施方法

従業員のストレス度合いを把握するストレスチェックは、常時使用する従業員が50人以上の事業所において、法律で実施が義務づけられています。ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスや生産性の向上に役立ちます。

また、2024年10月に開催された、厚生労働省 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会にて、義務化の対象を従業員50人未満の事業所にも広げる案が示され、2025年の通常国会で労働安全衛生法改正案が提出される予定との報道がありました。


読売新聞オンライン(2024年10月11日記事)

働く人の「ストレスチェック」、全事業所に義務拡大へ…昨年度の労災認定は過去最多の883人
https://www.yomiuri.co.jp/national/20241010-OYT1T50237/


事業所規模問わず、企業においてはストレスチェックに注目する必要性が高くなっています。
今回は、ストレスチェックの目的、実施方法などについて紹介します。

 

目次

1 ストレスチェックとは?

 1-1 ストレスチェックの目的

 1-2 実施義務がある事業所

2 ストレスチェックの実施方法

 2-1 対象者の確認

 2-2 ストレスチェック実施方針の周知

 2-3 実施方法・実施体制の決定

 2-4 社内規程の作成

 2-5 ストレスチェックの実施

 2-6 調査票の回収・結果通知

3 ストレスチェック受検後の対応

4 まとめ

1 ストレスチェックとは?

 

1-1 ストレスチェックの目的

ストレスチェックの目的は大きくわけて下記の2つです。

  • 労働者が、自分のストレスの状態に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと
  • 事業者が、ストレスチェックの結果をもとに職場の課題やストレスの原因を分析することで、職場環境改善につなげること

上記の①②を行うことで、うつ病など、ストレスに関連する精神疾患の発症を未然に防ぐことを目指しています。

 

1-2 実施義務がある事業所

2015年12月より、常時使用する労働者数が50人以上の事業所ではストレスチェックを年に一回実施することが義務づけられました。50人未満の事業所では努力義務とされています。

働く環境や社会の変化にともなって、職場の安全は「事故の危険や身体的な負担」だけでなく、仕事のストレスなどからくる「心理的な負担」にも配慮が求められるようになりました。労働者の「心理的な負担による精神疾患」が原因の労災認定件数が増えてきたことなどがきっかけとなり、ストレスチェックが義務化されました。

ただ、うつ病などの精神疾患を発症して労災認定を受けた人は増加傾向、2023年度は883名と過去最多となっております。このような背景もあり、冒頭でご紹介した通り、今後、労働者数の基準要件がなくなり、全事業所を対象にストレスチェック義務化される見込みであり、健康管理に関わる法令等の改正の動きは注視していく必要があります。

 

2 ストレスチェックの実施方法

ストレスチェックは、対象者の確認や社内方針を定めた後、実施体制を整備、ストレスチェックの実施、高ストレス者への医師の面接指導の流れで進めます。

今回のブログでは、ストレスチェックの結果通知までの実施の流れを解説します。

高ストレス者への医師の面接指導、職場環境改善活動などストレスチェック実施後の対応については、次回のブログで解説します。

 

2-1 対象者の確認

ストレスチェックは、事業所に常時使用される従業員が対象です。正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトも含みます。

対象者の要件は下記の通りです。

  • 1週間の労働時間数が所定労働時間数の4分の3以上であること
  • 期間の定めのある労働契約により雇用されている従業員の場合、引き続き1年以上雇用されていること、契約期間1年以上であることが要件となります。

契約期間が1年未満であっても契約更新により1年以上雇用されることが予定されている場合は、ストレスチェック受検対象者となります。

 

2-2 ストレスチェック実施方針の周知

ストレスチェックを実施する方針を全従業員が理解しやすいような方法、媒体を通じて、社内へ周知します。ストレスチェックの際は、その目的や必要性、円滑に実施する体制の整備、個人情報保護を含めた対応について、従業員へ十分な説明が必要です。

事業所においては年度毎に安全衛生(健康)方針を定めて周知しているところもあることから、その安全衛生(健康)方針の中にストレスチェックの内容等を含めて周知することも一つの方法です。

 

2-3 実施方法・実施体制の決定

衛生委員会等で、ストレスチェックの実施方法について調査・審議を行い、詳細を決定します。具体的には、実施時期や対象者、使用する質問票、実施方法(自記式、Web形式)、結果の管理方法などを議論し、適切な手順を確立します。また、実施後の高ストレス者の選定基準や面接指導の申出方法、集団分析方法についても決めておく必要があります​。

ストレスチェックの質問項目には、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つの領域が含まれています。全国の労働者のストレス状態と比べて、自分がどれくらいストレスを感じているのかを知ることができます。

使用する質問項目は、各事業所で決定します。よく使われている調査票として、厚生労働省が推奨している57項目版、さらに詳細な質問項目を追加した80項目版があります。57項目の調査票は、厚生労働省が推奨する形式で、標準的なストレスチェックとして広く採用されています。80項目の調査票は、標準的な57項目の質問に加え、働きがいやハラスメント、評価の妥当性など、さらに23項目を追加した形式です。職場全体のストレス要因を把握する項目が含まれており、より詳細な集団分析が可能です。より積極的に職場環境の改善に取り組みたい事業所で採用されているケースがあります。

ストレスチェック実施にあたり、主に以下の4つの役割を行う担当者を決め、実施体制を整えることが必要です。

 

<実務担当者>

実施計画の策定や従業員への通知など、ストレスチェック全体の調整を行う。

人事労務担当者や衛生管理者など。

<実施者>

ストレスチェックの企画と結果の評価を行う。以下の資格を持つ人物のみが実施者となることができます。

  • 医師:産業医が選任されている場合は、産業医が実施者になることが多い)
  • 保健師
  • 一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士等

<実施事務従事者>

質問票の回収やデータ入力など、実施者からの指示により補助業務を行う。従業員の解雇や昇進、異動について直接の権限を持つ監督的地位にある者は、実施者や実施事務従事者になることはできないため注意しましょう。

産業保健スタッフや人事労務担当者など。

<面接指導を行う医師>

高ストレス者への面接指導を実施する。産業医が選任されている場合は、産業医が望ましい。

 

なお、事業者にはストレスチェックの実施義務があるものの、従業員の受検は強制ではありません。強制ではなくとも、一人でも多くの従業員が安心して受検できるよう、周知をしっかり行うことが大切です。

 

2-4 社内規定の作成

実施方法や実施体制など決定した事項を社内規定に反映、明文化させます。社内規程は、「ストレスチェック制度実施規程」など内規として作成するのが一般的です。社内規程の内容は、ストレスチェック実施方針とあわせて全従業員に周知する必要があります。

 

2-5 ストレスチェックの実施

ストレスチェックの実施は、質問票を従業員に配布して行います。質問票は、紙だけでなく、Webツールを利用してオンラインで実施することも可能です。

 

2-6 調査票の回収・結果通知

記入が終わったら、調査票を回収します。Web受検の場合は、即時で結果表示される場合もあり、従業員が自身の状況をすぐに把握することができます。回収した調査票は、産業医や保健師などの実施者が分析・評価を行い、面接指導が必要な高ストレス者を選びます。結果は、実施者から直接従業員へ通知されますが、企業は本人の同意なく結果を確認できないため、注意してください。

 

3 ストレスチェック受検後の対応

ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員は、医師による面接指導を受けることが推奨されており、申し出があった場合は、面接指導を行います。また、面接指導を実施した後の医師からの意見聴取、ストレスチェックの集団分析などを行います。詳細は次回のブログで解説します。

 

4 まとめ

  • ストレスチェックは、常時使用する従業員が50人以上の事業所において、法律で実施が義務づけられている。
  • 労働者は、ストレスチェックを受けることで自分のストレスの状態に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことが可能となる。
  • 事業者は、ストレスチェック実施方法や実施体制などの記載した社内規定を作成し、ストレスチェック実施方針を従業員に理解してもらう必要がある。

 

当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。

今回紹介した高ストレス者への医師の面接指導などストレスチェックに関わる業務も含め、産業医選任、業務委託などでお困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。