長時間労働者への医師による面接指導 実施基準と流れ|未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント

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長時間労働者への医師による面接指導 実施基準と流れ

近年、長時間にわたる過重な労働は疲労の蓄積をもたらす要因と考えられ、さらには脳・心臓疾患(例:脳出血、心筋梗塞)や精神障害(例:うつ病)との関連が認められています。2019年に働き方改革関連法案施行、労働時間に関する規制が強化されました。さまざまな心身の不調の原因となる長時間労働対策は企業において重要な取り組みとなっています。中でも、長時間労働者への医師による面接指導は不調の早期発見につながるともに、医師が事業者に対し産業保健の観点から意見することで労働者の健康を守ることにつながります。

今回は、長時間労働者への医師による面接指導を実施する基準と流れ、産業医の役割について詳しく解説します。

目次

1 長時間労働者への医師による面接指導制度とは?

2 面談が必要となる長時間労働者の基準

3 長時間労働者への医師による面接指導の流れ

 3-1 事業者から医師・労働者本人への労働状況の報告、面接指導の申し出

 3-2 医師による面接指導

 3-3 医師からの意見聴取、就業上の措置の実施、措置内容の報告

4 面接指導後のケアやフォロー体制

5 まとめ

1 長時間労働者への医師による面接指導制度とは?

面接指導制度とは、長時間の労働により疲労が蓄積し健康障害発症のリスクが高まった労働者について、健康面や仕事の状況を把握し、これに応じて本人に対する指導を行うとともに、その結果を踏まえた措置を講じるものです。労働安全衛生法で義務づけられており、企業は長時間労働者に対して医師による面接指導を実施しなければなりません。

 

なお、長時間労働の定義や健康影響については以下の記事をご覧ください。

長時間労働による健康影響 ~毎年11月は過労死防止啓発月間 | 未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント

 

2 面談が必要となる長時間労働者の基準

長時間労働者面談が必要な対象者は下の図の通りとなります。

画像引用:「医師による長時間労働面接指導実施マニュアル」

https://www.mhlw.go.jp/content/000843223.pdf

 

2019年の法改正前は1ヶ月あたり100時間を超える時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面談を申し出た労働者に面接指導することが義務づけられていました。

法改正後は、時間外・休日労働が「月100時間超え」から、「月80時間超え」に基準が変更になった他、新たに高度プロフェッショナル制度が創設され、制度利用者向けの基準も新たに設定されています。

また、努力義務として事業者が自主的に定めた基準に該当するものに対しても面接指導を行う必要があります。

この法改正を機に、実施基準となる月80時間の前段階で独自基準を設定する企業も増えるようになりました。

例えば、時間外・休日労働が月45時間超えの状態が2カ月連続となった場合や、時間外・休日労働が月45時間超えた労働者に対し、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(中央労働災害防止協会)を回答してもらい、その結果により長時間労働面接指導を行う方法などがあります。

 

3 長時間労働者への医師による面接指導の流れ

以降、産業医が面接指導(産業医面談)を行う仮定で話を勧めます。

面接指導の流れを下図に示します。

単に対象者に対して産業医面談を実施すればよいだけではなく、労働者の労働時間を把握し、労働者の情報を提供、本人の申し出をもとに面接指導を実施しなければなりません。また、面談後の事後措置についても規定されています。

  3-1 事業者から医師・労働者本人への労働状況の報告、面談指導の申し出

事業者は、医師に労働状況を共有するとともに、対象となる労働者本人に、医師面談が必要になる基準の法定外労働時間を超えたことを通知しなければなりません。労働者本人に産業医面談の必要性があることを理解してもらい、産業医面談の申し出を勧奨するために必要な措置です。

ただ、事業所によっては、対象者本人の申し出の有無によらず、面談基準に該当する労働を行った労働者皆に面談する方法、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(中央労働災害防止協会)の回答結果によって面談実施者を決定する方法で対応するなど、法令で求められる基準より多くの労働者が産業医面談を行っているケースもあります。

 

  3-2 医師による面接指導

産業医は、疲労の蓄積や睡眠の状況、心身の不調の有無、業務の状況などを面談で確認します。労働者の状況に応じ、疲労の蓄積を軽減するための生活習慣指導を行ったり、心身の不調が目立つ状態であれば医療機関への受診勧奨を行います。また、就業上の措置の必要性や措置内容を検討します。

 

  3-3 医師からの意見聴取、就業上の措置の実施、措置内容の報告

産業医面談後、事業者は産業医から、疲労の蓄積の状況、心身の状況などを聴取し、就業上の措置が必要か確認します。就業上の措置が必要との産業医意見があれば、産業医意見も参考にして、措置内容を決定、措置・配慮を実施するとともに、産業医に措置内容を報告します。

 

4 面接指導後のケアやフォロー体制

長時間労働者に対しては、産業医面談後もこまめなケアやフォロー体制が必要です。

初回の産業医面談時には、疲労の蓄積や心身の不調が目立っていなくても、長時間の時間外労働が常態化していれば、体調が変化する可能性があり、注意深く経過観察する必要があります。

また、業務上のフォロー体制の充実や、産業医からの意見を基づき、就業制限や労働時間の制限を設けたケースでは、疲労の蓄積が軽減しているか、心身の不調が改善している確認することも必要です。

 

5 まとめ

  • 1ヶ月あたり80時間を超える時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり、面談を申し出た労働者(研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度適用者を除く)に面接指導することが義務づけられている。
  • 医師は、労働者の疲労の蓄積や業務の状況、心身の不調の有無、などを確認し、必要と判断した場合、就業上の措置などについて事業者に意見する。
  • 事業者は医師から就業上の措置の要否などについて聴取し、措置を講じることで労働者の健康が守られる。

 

当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。

今回紹介した長時間労働者への面談対応、支援も含め、産業医選任、業務委託などでお困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。