時間労働は、疲労回復に必要な睡眠・休養時間を減少させ、重大な健康障害を引き起こす可能性があります。厚生労働省は毎年11月を過労死防止啓発月間とし、過労死等とその防止について啓発・周知を図っています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43985.html
今回は、長時間労働による代表的な健康影響、覚えておきたい時間外労働時間の目安などについて解説します。
目次 |
1 健康影響・健康障害リスクを高める時間外労働時間
2 長時間労働に伴う弊害・健康障害
2-1 長時間労働時の生活シミュレーション
2-2 長時間労働に伴う健康障害
3 現状を把握するツール:労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト
4 不調があれば産業医等に相談を
5 まとめ長
1 健康影響・健康障害リスクを高める時間外労働時間 |
健康を守るに、日本では時間外労働時間(1週間当たり40時間を超えて労働した時間)が月当たり45時間以内となるように推奨されています。それより長い時間外労働時間、単月で100時間超、あるいは2~6か月を平均して月に80時間超では、健康障害が起こりやすくなります。これらの水準は、いわゆる「過労死ライン」と呼ばれています。
図:時間外・休日労働と健康障害リスクの関係
(厚生労働省「過労死等を防止するための対策BOOK」より引用)
2 長時間労働に伴う弊害・健康影響 |
長時間労働により、労働負荷が増大するとともに、睡眠・休養時間や家庭生活・余暇時間が不足することで疲労が蓄積し、心身の不調をきたす可能性が高まります。
2-1 長時間労働時の生活シミュレーション |
長時間労働を行うと生活にどのように影響するかを考えます。
労働時間8時間、休憩時間1時間、通勤時間(片道)1時間、生活時間(食事・風呂・身支度など)4時間のケースで考えます。
<時間外労働なし>
労働時間8時間、休憩時間1時間、通勤時間(往復)2時間、生活時間4時間、
睡眠時間7時間、余暇時間2時間
<時間外労働 月60時間(1日あたり3時間)>
労働時間8時間、休憩時間1時間、通勤時間(往復)2時間、生活時間4時間、
時間外労働3時間、睡眠時間6時間、余暇時間なし
→「時間外労働なし」と比べ、余暇時間がなくなり、睡眠時間が7時間から6時間に短縮します。
<時間外労働 月80時間(1日あたり4時間)>
労働時間8時間、休憩時間1時間、通勤時間(往復)2時間、生活時間4時間、
時間外労働4時間、睡眠時間5時間、余暇時間なし
→「時間外労働 月60時間」と比べ、睡眠時間が6時間から5時間とさらに短縮します。
2-2 長時間労働に伴う健康障害 |
長時間労働の健康障害の代表例として、脳血管疾患(脳出血など)や心臓疾患(心筋梗塞など)、精神障害(うつ病など)があります。
3 現状を把握するツール:労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト |
労働者の疲労蓄積度を把握するツールとして、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストがあります。2023年4月、中央労働災害防止協会が、働き方の変化、最新の知見等を踏まえ、20年ぶりにチェックリストを改正しました。
下記のページ(中央労働災害防止協会 安全衛生情報センターHP内)で確認、回答できますので、チェックされてみてはいかがでしょうか。
https://www.jaish.gr.jp/td_chk/tdchk_e_index.html
4 不調があれば産業医等に相談を |
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストで疲労蓄積度が高い、もしくは、ゆううつな気分や強い眠気、食欲が出ないなどの不調があった場合は、産業医や保健師などの産業保健スタッフ、医療機関に相談することをお勧めします。
5 まとめ |
- 時間外労働時間が月45時間以上となると健康障害リスクが高まる。
- 長時間労働を行うことで、余暇時間や睡眠時間が減少し、心身の疲労が高まる。
- 疲労蓄積度自己診断チェックリストで疲労蓄積度が高い、不調があった場合には、医療機関や産業医等産業保健スタッフに相談を。
当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。
今回紹介した長時間労働者への支援も含め、産業医選任、業務委託などで困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。