メンタルヘルス不調者の職場復帰支援と産業医|未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント

トピックス TOPICS

メンタルヘルス不調者の職場復帰支援と産業医

働く人々の心の健康を守ることは、生産性の向上や職場環境の改善につながります。特に、メンタルヘルス不調により休業した労働者の職場復帰支援は、労働者本人のみならず、企業全体にとっても非常に重要です。適切な支援が行われることで、労働者の体調回復が促進され、生産性の向上や離職率の低減につながります。うつ病で休業を開始した労働者がいるとき、いつから、どのように職場復帰に向けて支援したら良いのでしょうか。このブログでは、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援のポイントと産業医の役割について詳しく解説します。

 目次

1 メンタルヘルス不調者の現状

2 職場復帰を支援する5つのステップ

 2-1 第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア

 2―2 第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断

 2-3 第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

 2-4 第4ステップ:最終的な職場復帰の決定

 2-5 第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ

3 まとめ

 

 1. メンタルヘルス不調者の現状

2022年に行なわれた厚生労働省の調査(令和4年労働安全衛生調査(実態調査))によると、「仕事や職業生活に関することで、強いストレスになっていると感じる事柄がある」と答えた労働者の割合は82.2%、過去1年(令和3年11月1日から令和4年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者のいた事業所の割合は10.6%(前年調査では8.8%)、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者の割合は0.6%(前年調査では0.5%)といずれも増加していました。

 

 2. 職場復帰を支援するための5つのステップ

 

2. 職場復帰を支援するための5つのステップ

厚生労働省では、事業者が労働者の円滑な職場復帰を支援するため、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」をとりまとめています。

厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf

休業開始から職場復帰後のフォローアップまで、5つのステップで進めることが推奨されています。

 

2-1 第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア

労働者から主治医による診断書(病気休業診断書)が提出され、休業が始まります。休業する労働者に対しては、必要な事務手続きや職場復帰支援の手順を説明します。また、労働者が病気休業期間中に安心して療養に専念できるよう、傷病手当金などの経済的な保障、不安、悩みの相談先、休業の最長(保障)期間などについて情報提供しましょう。

実際、産業医活動をする中で、休業を開始する多くの労働者が気にされているのは、経済的保障の面です。企業の人事担当者や管理監督者の方には、労働者が休業開始する時には、経済的保障等について簡潔にお伝えいただきたいというのが一産業医としての思いです。

管理監督者らが行う定期連絡の中で、体調が回復傾向で職場復帰時期が近づいてきている状況であれば、労働者の希望を確認した上で、休業(休職)中に産業医面談を行うこともケアの一つになります。産業医は労働者の回復状況が把握でき、必要に応じて従業員の主治医と連携をとることができる等のメリットがあります。

 

2-2 第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断

休業中の労働者から職場復帰の意思表示があった場合、主治医による職場復帰が可能という判断が記された診断書の提出を求めます。主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません。また、従業員・家族の希望が、診断書の内容に含まれている可能性もあるため注意が必要です。このため、主治医の判断とともに、職場で必要とされる業務遂行能力の内容等も勘案し復帰可否を検討する産業医にも相談、意見を求めることが重要です。主治医から「職場復帰可能」の旨が記載された診断書を受領し、その後に産業医面談を実施することが一般的です。

 

2-3 第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

休業中の従業員の意思に加えて、職場復帰が可能か判断するため、労働者の病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する労働者の考え、業務・職場との適合性、職場側の支援準備状況などを確認、評価します。収集した情報を基に、人事担当者、産業医等が職場復帰可否を判断します。職場復帰可能と判断した場合には、以下の項目に検討し、職場復帰支援プランを作成します。

  • 職場復帰日
  • 人事労務管理上の対応(配置転換や異動、勤務制度変更の要否等)
  • 産業医による職場復帰支援に関する意見・助言および管理監督者による就業上の配慮(業務内容・業務量の配慮、深夜勤務・時間外勤務の制限など)
  • 管理監督者や産業医等企業内産業保健スタッフによるフォローアップ方法

 

2-4 第4ステップ:最終的な職場復帰の決定

第3ステップを踏まえたうえで、職場復帰を決定します。

職場復帰にあたっては、産業医が就業上の配慮に関する意見書を作成、それを基に当該労働者と話し合いながら手続きを進めることが重要です。

 

2-5 第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ

職場復帰後のフォローアップを行います。職場復帰した労働者の病状悪化や再休業を防ぐためには、管理監督者や産業医等企業内産業保健スタッフ等によって職場復帰後のフォローアップを実施することが重要です。心の健康問題は、疾患が再燃・再発することも多く、復職後に計画どおりに職場復帰が進まないケースも少なくありません。職場復帰後も経過観察を行いつつ、必要に応じて職場復帰支援プランの見直しを行うことが大切です。

職場復帰後1か月、3か月、6か月時点を目安に、産業医面談を行い、体調や職場環境や業務への順応状況などを確認、状況に応じて就業上の配慮に関する意見を変更します。復帰後3~6か月時点で通常勤務可能となることを目指す企業が多いです。

 

3.まとめ

  • 仕事や職業生活に関するストレスを強く感じる労働者、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者の割合は増加傾向であり、職場復帰支援は、労働者本人のみならず、企業全体にとっても非常に重要。
  • 職場復帰支援には5つのステップがあり、管理監督者等複数のスタッフが連携して支援を進めることが求められている。
  • 支援するスタッフの一人として産業医がおり、職場で必要とされる業務遂行能力の内容等も勘案し復帰可否についての意見、復帰後の病状悪化を防止するため、定期的に面談を行い、就業上配慮に関する意見を述べることができる。

 

当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。

今回紹介した職場復帰支援も含め、産業医選任、業務委託などで困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。