事業場における産業医の選任は、労働者の健康と安全を守るための重要な施策の一つです。しかし、労働者数により必要となる産業医の人数が変わったり、産業医を常勤させる必要があります。
また、メリット、費用に関しては不明確な点も多いと思います。
産業医の選任に関する基本情報を整理し、選任のメリットや費用についても解説します。
産業医選任の具体的なポイントを押さえて、効果的な健康管理体制を構築しましょう。
目次 |
1 産業医選任の法的基準、選任人数
1-1 産業医選任の法的基準1-2 事業場規模別の産業医の適正人数
1-3 労働者数としてカウントする対象者
2 産業医を選任するメリット
2-1 労働者の健康保持・増進
2-2 適切な職場復帰支援
2-3 職場環境改善、労働者の満足度向上
2-4 生産性の向上、労働災害防止
2-5 社外に対する企業イメージの向上
3 産業医選任にかかる費用
4 まとめ
1 産業医選任の法的基準、選任人数 |
1-1 産業医選任の法的基準 |
労働者が50人以上の事業場においては、産業医を選任する必要があります。
労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令で定められている義務です。
1-2 事業場規模別の産業医の適正人数 |
事業場の規模によって必要とされる産業医の人数は異なります。
産業医選任義務も含め下記の表にまとめます。
労働者数 |
1~49人 |
50~999人 |
1000~3000人 |
3001人以上 |
産業医の 選任義務 |
選任義務なし (医師等による健康管理等の努力義務) |
1名以上 |
1名以上 (専属) |
2名以上 (専属) |
※ただし、有害業務に500人以上の労働者を従事させる事業場においては、専属の産業医の選任が必要。
産業医の選任義務が発生するのは、企業全体の労働者数ではなく「事業場ごと」であることが注意点です。例えば、全労働者数が200名の企業で、A支店の労働者が100名、B支店の労働者が70名、C支店の労働者が30名であれば、C支店は産業医を選任する義務はありませんが、A支店、B支店についてはそれぞれで産業医を選任する義務があります。
1-3 労働者数としてカウントする対象者 |
労働者数としてカウントする対象者として、派遣者やパートなどが入るか疑問の方もいると思います。勤務日の頻度、勤務時間の多少に関わらず常態的に雇用されている者であれば対象者となるため注意が必要です。
2 産業医を選任するメリット |
2-1 労働者の健康維持・増進 |
産業医が行う、労働者からの健康相談対応や健康診断実施後のフォローアップを通じて、労働者の健康意識が向上し、心身の不調の予防・改善が期待できます。
2-2 適切な職場復帰支援 |
休業している労働者の状況を理解しきれず、対応や判断に迷うこともあると思います。主治医の診断書のみに基づいて職場復帰の手続きを行った場合、病状を正確に判断できずに、労働者に適した職場復帰支援を行えない可能性があります。なぜなら、主治医の診断は日常生活における回復を目安に職場復帰可能と判断している場合が多く、必ずしも就業できるレベルまで回復していると言い切れないケースもあるためです。
産業医は、主治医の診断と職場環境や業務内容などを勘案して、職場復帰に関する意見を述べることができます。事業場は産業医の意見も参考にして、適切な職場復帰可否判断、職場復帰後支援を行うことができます。
2-3 職場環境改善、労働者の満足度向上 |
産業医面談や職場巡視などを実施し、産業医に助言・指導を受けることで、労働者にとって快適な職場環境の形成を促進することができます。また、日頃から産業医に相談しやすい体制が構築されていれば、労働者の安心感につながり、労働者の満足度を引き上げられることが期待できます。
2-4 生産性の向上、労働災害防止 |
労働者の健康保持・増進や職場環境改善などを通じて、事業場での労働生産性の向上や、労働災害防止にも貢献することが期待できます。
2-5 外部に対する企業イメージの向上 |
産業医を選任していることは労働者の健康に配慮していると指標の一つになります。求職者や取引先などへのアピールポイントとなり、企業イメージの向上につながります。
3 産業医選任にかかる費用 |
事業場が産業医に求める活動により費用は変わるため、一概には言えません。
愛知県医師会や日本橋医師会などは産業医報酬の目安を示しており、参考情報として提示します。
日本橋医師会 産業医報酬基準額
https://www.nihonbashi-med.com/topics/topic_file32_1460600097.pdf
愛知県医師会産業保健部会 嘱託産業医報酬の目安
https://ishikai.nagoya/citizen/file/r5_houshumeyasu.pdf
1ヵ月の報酬額の目安をしてしているものの、産業医の活動回数や時間については考慮、言及されていない点は留意する必要があります。
事業場が産業医に期待する活動を産業医に伝え、協議することが望ましいです。
4 まとめ |
- 労働者が50人以上の事業場では、産業医を選任する義務がある。
- 産業医を選任、活用することで、労働者が健康で快適な職場環境のもとで仕事が行えるようになり、労働者の満足度・生産性が向上することが期待できる。
- 産業医に期待する活動を検討の上、産業医報酬目安を示している医師会の情報も参考に、産業医と協議の上、費用を相談する。
当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。
産業医選任で困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。