公開日:2025/10/29
2025年10月3日、厚生労働省は、今シーズン(2025/2026年シーズン)のインフルエンザが全国的に流行入りしたと発表しました。
日本経済新聞記事(2025年10月3日、Web)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF03AK10T01C25A0000000/?msockid=186df7c1a2e962ad1d1de368a33b6370
事業場にとっては、インフルエンザ感染により従業員の健康への影響とともに、欠勤が増える、流行することで、生産性の低下につながる恐れがあります。
今回は、インフルエンザについて、職場・個人でできる対策・備えについて、解説します。
目次 |
1 インフルエンザの発生状況
2 インフルエンザの症状・特徴
3 インフルエンザ予防・対策
4 インフルエンザワクチン
5 職場における対策・注意事項
6 まとめ
1 インフルエンザの発生状況 |
インフルエンザは、例年12月から3月に流行、1月から2月が流行のピークと言われています。
定点当たり報告数が1.00を上回った時が流行開始の目安とされています。
愛知県や東京都などから流行レベルの目安として、注意報、警報が設定されています。
注意報・・・定点当たり報告数が10を上回る
警報・・・定点当たり報告数が30を上回る
過去2シーズンについて振り返ります。
<2023/2024シーズン>例年より早く流行入り、長い流行期間
2023/2024シーズン最初の2023年第36週(2023年9月4日から9月10日まで)時点で、定点当たり報告数が4.48であった。
2023年第33週(2023年8月14日から8月20日まで)の定点当たり報告数が1.01であり、8月中旬に流行開始となっていた。
定点当たり報告数が1.00を下回ったのは、2024年第18週(2023年4月29日から5月5日まで)であった。
<2024/2025シーズン>爆発的な流行
2024年第44週(2024年10月28日から11月3日まで)の定点当たり報告数が1.04であり、10月末から11月初旬頃に流行開始となった。
2024年第50週(2024年12月9日から12月15日まで)の定点当たり報告数が19.06と急増(前週 9.03)、流行「注意報」レベルとなった。
さらに、定点当たり報告数が、2024年第51週(2024年12月16日から12月22日まで)42.66と流行「警報」レベルとなり、その翌週、第52週(2024年12月23日から12月29日まで)には、64.39とさらに増加しました。
2024年第52週(2024年12月23日から12月29日まで)の定点当たり報告数64.39は、感染症法に基づく現行の報告体制となった1999年以降最大の数であり、爆発的な流行のシーズンだったと言えます。
<2025/2026シーズン>
今回の記事を掲載した10月下旬時点で発表されている情報を記載します。
2025年第40週(2025年9月22日から9月28日まで)の定点当たり報告数は1.04であり、10月3日に厚生労働省から流行入りの発表があった。
2025年第42週(2025年10月13日から10月19日まで)の定点当たり報告数は3.26と増加傾向が続いています。
2 インフルエンザの症状・特徴 |
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスを原因とする呼吸器感染症です。
発熱、頭痛、 全身倦怠感、筋肉痛、咳、鼻水などの症状が出現します。一般的な風邪に比べ、急な発熱(体温38℃以上)、筋肉痛等全身症状が強いのが特徴です。
インフルエンザの感染経路は、飛沫感染、接触感染です。
3 インフルエンザの予防・対策 |
インフルエンザの予防・対策のポイントは、「侵入させない」(病原体を体に侵入させない)、「やっつける」(免疫により排除)、「うつさない」ことです。

具体的な方法を以下に示します。

4 インフルエンザワクチン |
インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%という報告があります(厚生労働省HP「令和6年度インフルエンザQ&A」より)
※参考)「インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%」とは、
ワクチンを接種しなかった人100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%)
ワクチンを接種した人 100人のうち12人がインフルエンザを発病(発病率12%)
⇒ ワクチン有効率={(30-12)/30}×100=(1-0.4)×100=60%
ワクチンはその年に流行が予想されるA型2種類、B型1種類の株で構成されます。
2025/2026シーズンのワクチンは以下の株で構成されています。
A型株
A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)
A/パース/722/2024(IVR-262)(H3N2)
B型株
B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)
ワクチン接種後2週間から5カ月程度、効果が維持されると言われています。
インフルエンザウイルスは抗原変異を繰り返し、流行する株が変わるため、前年の免疫が十分に効かない場合が多い。
また、同じ株であっても免疫記憶を強化する「ブースター効果」により、毎年の接種で重症化予防効果が高まるため、ワクチンは毎年接種する必要があります。
例年の流行時期が12月から3月、1月から2月が流行のピークと言われていることから、毎年11月までにワクチン接種することが推奨されています。
5 職場における対策・注意事項 |
<日頃の対応>
職場内流行を予防するため、適時、マスク着用や手洗い、消毒、換気を行う。
オフィスなど屋内作業場については、湿度を保つように心がける(目安:40%以上)。
<インフルエンザ感染者が発生した時>
インフルエンザに感染した場合、法令上は休業を義務付ける規定はありません。
ただ、発症から一定期間はウイルスが排出され、周囲の人にうつす可能性があるため、学校保健安全法の規定を準用し、感染した従業員に、発症後5日経過、かつ、解熱後2日間経過するまで休業するようなルールを設定している事業場もあります。
5 まとめ |
- インフルエンザは、例年12月から3月に流行し、1月から2月が流行のピーク
- 予防のため、「侵入させない」「うつさない」「やっつける」ための行動を意識する。
- インフルエンザワクチンは、接種後2週間から5カ月程度、効果が維持され、毎年11月までに接種することが推奨されている。
当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。
今回紹介したインフルエンザ対策についても、医師、産業医目線からアドバイスします。
産業医選任、業務委託などでお困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。
産業医・労働衛生コンサルタント
髙畑 真司