公開日:2025/6/24
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律が2025年5月8日に可決成立し、5月14日に公布されました。
厚生労働省が公表している法律の概要案を以下に示します。
https://www.mhlw.go.jp/content/001449334.pdf
「改正の概要」の「2.職場のメンタルヘルス対策の推進」で、労働者50人未満の事業場におけるストレスチェックが義務化されることが示されています。
ストレスチェック実施義務が拡大した背景、実施義務拡大が施行される見込み時期、企業で求められる準備について解説します。
目次 |
1 ストレスチェックとは
2 ストレスチェック実施義務が拡大した背景
3 実施義務拡大が施行される見込み時期
4 施行日までに必要な準備
5 まとめ
1 ストレスチェックとは |
ストレスチェックは、労働者が自分のストレスの状態に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことなどを目的として、2015年12月から、常時使用する労働者数が50人以上の事業場実施することが義務付けられました。
ストレスチェックの目的と実施方法など詳細は、以下の当事務所ホームページ内のトピックスで紹介していますので、是非ご覧ください。
ストレスチェックの目的と実施方法 | 未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント
2 ストレスチェック実施義務が拡大した背景 |
厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が公表している中間とりまとめ資料(2024年11月公表)では、以下の記載があります。
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メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合は、労働者数50人以上の事業場で91.3%となっているが、30~49人の事業場では71.8%、10~29人では 56.6%と、小規模事業場においては未だ取組が低調である。
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精神障害の労災支給決定件数は、年々増加の傾向にあり、令和5年度は883 件と過去最多となっている。メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業場の割合は、近年上昇傾向にあり、1割を超えて推移している。
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ストレスチェックの実施については、平成26年の制度創設当時、労働者のプライバシー保護等の懸念により、50人未満の事業場において当分の間努力義務とされているが、現時点において、ストレスチェックを実施する場合の労働者のプライバシー保護については、外部機関の活用等により、対応可能な環境が一定程度整備されていると考えられることから、十分な支援体制の整備等を図った上で、ストレスチェックの実施義務対象を50人未満の全ての事業場に拡大することが適当である。
労働者50人未満の事業場におけてメンタルヘルス対策が低調であること、精神障害労災支給件数が年々増加傾向であること、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業場の割合が上昇傾向であることなど労働者のメンタルヘルス対策が喫緊の課題ととらえられています。
外部機関の活用等により労働者のプライバシー保護が確保される環境が整備されていると考えられる現状もあり、職場におけるメンタルヘルス対策の更なる強化を促すため、事業場規模を問わない法的なストレスチェック対応義務を明確化したものと考えます。
3 実施義務拡大が施行される見込み時期 |
ストレスチェック実施義務拡大の施行期日については、「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、遅くとも2028年5月までに施行される見込みです。
4 施行日までに必要な準備 |
厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が公表している中間とりまとめ資料で、「50人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法についてマニュアルを作成し、周知を徹底することを前提とする。特に、10人未満等の小規模な事業場については、その実情を考慮した取り組み可能な実施内容を示す必要がある」との記載があります。
今後、小規模事業場向けのストレスチェック実施マニュアルが作成、周知される予定です。企業の衛生担当者は、マニュアル公表に注目、内容確認の上、実施体制を整える必要があります。
また、ストレスチェック実施後、高ストレス者に該当し、医師との面接指導の申し出が労働者からあった場合、医師による面接指導を行う必要があります。
高ストレス者に対する医師の面接指導については、以下の当事務所ホームページ内のトピックスで紹介していますので、是非ご覧ください。
高ストレス者に対する医師の面接指導 | 未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント
面接指導を行った医師は、就業上配慮や職場環境改善の提案、医療機関受診の必要性などについて検討し、事業者に意見を述べます。面接指導を行う医師が産業医の場合、これまでの産業医活動で得た会社事情等を勘案した意見、提案を行いやすいと考えられます。産業医選任義務のない労働者50人未満事業場においても、ストレスチェック実施義務対応遵守とともに、労働者の健康問題の課題解決のため、産業医を選任、活用することを検討されても良いかもしれません。
5 まとめ
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労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(2025年5月14日公布)により、2028年5月までに、事業場規模問わずストレスチェックを実施することが義務化される予定となった。
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労働者50人未満の事業場の衛生担当者は、小規模事業場向けのストレスチェック実施マニュアル公表に注目し、内容確認の上、実施体制を整える必要がある。
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ストレスチェック実施義務対応とともに、労働者の健康問題の課題解決のため、産業医を選任、活用することも選択肢である。
当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。
今回紹介したストレスチェック実施についての医師、産業医目線からのアドバイスも含め、産業医選任、業務委託などでお困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。