職場の衛生基準:事務所則のまとめ、産業医としての関わり|未来労働衛生コンサルタント事務所|名古屋市瑞穂区の産業医・労働衛生コンサルタント

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職場の衛生基準:事務所則のまとめ、産業医としての関わり

公開日:2025/12/24 

皆さんは、「事務所則」、「事務所衛生基準規則」という言葉を聞いたことがありますか?
事務所(オフィス)で働く人が快適に、健康に、安全に働けるようにするための大事なルールです。
年末となり、事務所を大掃除される方もいるかもしれませんが、大掃除と合わせて、職場の衛生基準をチェックするため、今回は、事務所則のポイントを解説します。

目次


1 事務所労働衛生基準規則(事務所則)とは
2 事務所則の主な項目と内容
3 産業医としての関わり(当事務所産業医活動の実際)
4 まとめ

1 事務所労働衛生基準規則(事務所則)とは


「事務所衛生基準規則」(通称:事務所則)は、厚生労働省が事業所(オフィス)で働く人々の健康と安全を守るため、事業者が守るべき衛生基準を定めたものです照明・換気・休養のための設備・清潔保持など、多岐にわたる基準が含まれています。

2 事務所則の主な項目と内容

 
多様な労働者の働きやすい環境整備への高まり等の社会状況の変化を踏まえ、労働衛生基準が2021年に改正されました。

事務所則は、文字通り、事務所について適用される規則です。事務所とは、建築基準法に掲げる建築物又はその一部で、事務作業に従事する労働者が主として使用するものを指します。
以降、2022年12月1日施行分(照度基準)を含めた内容について解説します。




<一酸化炭素・二酸化炭素>
空気調和設備または機械換気設備を設けている場合には、一酸化炭素の含有率が10ppm以下、二酸化炭素の含有率が0.1%以下となるようにしなければならないとされています。(事務所則第5条第1項2号)。
「空気調和設備」は、室内の温度、湿度、空気の清浄度を制御し、快適な居住環境を提供するための装置やシステムのことを言います。いわゆる空調設備、エアコンのことを指します。

<温度>
温度に関しては、室内の気温が10度以下の場合には、暖房などの適当な温度調節をする義務があります(事務所則第4条第1項)。
冷房の場合は、室内の気温を「外気温より著しく低くしてはならない」と定められています(事務所則第4条第2項)。
空気調和設備を設けている場合は、労働者が常時就労する室内の気温を18度以上28度以下にする努力義務が定められています(事務所則第5条第3項)。
改正前は17度でしたが努力目標値が変更されました。世界保健機関(WHO)が2018年に発表した「住宅と健康に関するガイドライン」で、冬の室内温度を18度以上にすることを強く勧告していることが改正の理由の1つとなっています。

<湿度>
空気調和設備を設けている場合に、相対湿度を40%以上70%以下にする努力義務が定められています(事務所則第5条第3項)。

<照度>
改正前は、「精密な作業」(300ルクス以上)、「普通の作業」(150ルクス以上)、「粗な作業」(70ルクス以上)の3区分だったのが「一般的な事務作業」(300ルクス以上)「付随的な事務作業」(150ルクス以上)の2区分に改正されました(事務所則第10条第1項)。
「ルクス」とは、その場所(面)に到達している光(照度)の単位で、照度計を用いて測ることができます。
「付随的な事務作業」とは、資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要の「ない」ものが該当します。
照度不足の際に生じる眼精疲労や、文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる上肢障害等の健康被害を防止する観点から改正されました。
また、事務所における高年齢労働者が増加しており、必要に応じて個々の労働者に視力を眼鏡などで矯正することを促した上で、作業面における照度を適切に確保することが重要です。

<清掃>
清掃は、日常行う清掃のほか、大掃除を6か月以内ごとに1回、定期かつ統一的に行う必要があります
(事務所則第15条第1項1号)。
年末に大掃除を実施されている企業も多いと思いますが、事務所則では、6か月以内ごとに1回の大掃除を義務づけていますので、6月頃にも大掃除を行う必要があります。

<便所>
原則として、男性用と女性用に区別しなければなりません
(事務所則第17条第1項1号)。
その上で、事務所で同時に就業する男性労働者の数が60人以内なら男性用大便所の便房を1つ、60人超の場合は便房を60人以内ごとに1つ設ける必要があります(事務所則第17条第1項2号)。「便房」とは「男性用の小便器以外の便器のある場所をいい、1人分の区画の範囲を指す」とされています。
「男性用小便所」の規定もあります(事務所則第17条第1項3号)。同時に就業する男性労働者が30人以内なら男性用小便所が1つ、30人を超えると30人以内を超えるごとに1つ必要となります
女性労働者については、同時に就業する女性労働者が20人以内で便房が1つ、20人を超えるごとにさらに女性用便所の便房が1つずつ必要となります(事務所則第17条第1項4号)。
同時に就業する労働者が常時10人以内の場合には、例外として「独立個室型の便所」を設けることで足りるものとするという規定がなされました。
「独立個室型の便所」とは、「男性用と女性用に区別しない四方を壁等に囲まれた一個の便房により構成される便所」です。(事務所則第17条の2第1項)
また、付加的に設置した独立個室型の便所の取扱いについても規定されました。障害のある労働者への配慮や、高年齢労働者の利便性の改善等、便所に対するニーズは多様化していることから、男性用と女性用に区別した便所を設けた上で、独立個室型の便所を設ける場合は、トイレの設置数を算定する際の基準となる同時に就業する労働者の数を独立個室型の便所1個につき男女それぞれ10人ずつ減らすことができることとなりました。

<休養室等>
常時50人以上または常時30人以上の労働者を使用する場合は、休養室または休養所(以下「休養室等」)を設けなければなりません(事務所則第21条)。
この休養室等は男性用と女性用に区別して設けなければならないことに加えて、労働者が「が床」することができなければなりません「が床(臥床)」とは横になって寝る(休む)ことを意味します。
これらは事業場において病弱者、生理日の女性等が一時的に使用するために設けられるもので、長時間の休養等が必要な場合は速やかに医療機関に搬送又は帰宅させることが基本であるため、随時利用できる機能が確保されていれば専用の設備である必要はありません。
また、休養室又は休養所では体調不良の労働者が横になって休むことが想定されており、利用者のプライバシーと安全が確保されるよう、設置場所の状況等に応じた配慮が求められます。

<救急用具>
 「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」(以下「救急用具」)を備え、その場所と使用方法を労働者に周知させる必要があります(事務所則第23条)。
救急用具は労働安全衛生規則の方で法改正がなされ、これまでは救急用具として備えなければならない品目が具体的に規定されていました。しかし、事業の種類や作業の実態に応じて必要な救急用具が異なることから、各事業場において想定される労働災害等に応じて応急手当に必要なものを備えるべきとして、具体的な品目は安衛則の規定から削除されました。

3 産業医としての関わり(当事務所産業医活動の実際)

 
産業医職場巡視の中で、室内の温度・湿度・照度の状況や休憩室・休養室が設置されているか、どのような環境か、救急箱の内容などを確認します。
衛生委員会において、事務所則で規定されている項目について、審議されることがあります。その際は、事務所則の規定について情報提供し、快適な職場環境形成のためにどうしていけばよいか意見交換しています。

4 まとめ

 

  • 事務所衛生基準規則(事務所則)は、事業所(オフィス)で働く人々の健康と安全を守るため、事業者が守るべき衛生基準を定めたもの
  • 多様な労働者の働きやすい環境整備への高まり等の社会状況の変化を踏まえ、室内の温度、照度、便所などの規定が2021年改正された。
  • 産業医は、事務所則で規定されている項目について確認し、適宜助言している。

当事務所は、事業場の現状、要望を聞きながら、親切、丁寧に対応します。
今回紹介したインフルエンザ対策についても、医師、産業医目線からアドバイスします。
産業医選任、業務委託などでお困りの企業様は、お気軽にお問い合わせください。

産業医・労働衛生コンサルタント
髙畑 真司